命と情の象徴を読み解く

第18回「本好きのための読書サロン」のテーマは『赤』。

赤を象徴的に用いた本が集まり、視覚も聴覚も皮膚感覚も大いに刺激されました。

太陽や火や血液からは生命を、情熱や怒りからは赤く燃える熱量をイメージします。

そして、何といっても目立ちますね~(笑)

参加メンバーが順番に1冊ずつ出していくのですが、今までの色シリーズとは一味違う熱いエネルギーに満ち満ちて、あっという間の2時間でした。

皆さま、ありがとうございました。

持ち寄り本の紹介です。

 

●ミレニアム第2部「火と戯れる女」 スティーグ・ラーソン

天才ハッカー:リスベットを主人公に、猟奇殺人犯や国際犯罪組織との戦いを描く、スウェーデン発のミステリー小説。シリーズ全体を通して、女性に対する差別や暴力や性的虐待が様々な形で描かれるのだが、決して屈しない女性たちもたくさん登場。本作では、リスベットの衝撃的な過去が明らかになる。

 

 

●ミレニアム第5部「復讐の炎を吐く女」 ダヴィド・ラーゲルクランツ

第1部から第3部を執筆したスティーグ・ラーソンは、第1部の出版を見ることなく急死。出版社から依頼されたダヴィド・ラーゲルクランツが、第4部から6部を執筆している。第4作で人工頭脳研究の世界的権威者の息子を救ったリスベットだが、その時の犯罪行為で収監されてしまう。本作では、刑務所内で組織的に行われる女性に対する暴力と闘う主人公の、さらなる秘密が明かされる。

 

 

 

●草間彌生を知りたい ディスカバー・ジャパン編集部

草間彌生といえば、赤。世界的な前衛芸術家の作品や活動の様子とともに、そのドラマチックな半生をたどる特集号。本人のインタビューも掲載されている。永遠の永遠の永遠!

 

 

●読み聞かせ絵本 きみがよものがたり たちばなのりとし/田口陽子

三十二音からなる古歌は、千年の時を経て、日本人の心の原点と平和への想いを今に伝える。「きみがよ」のこころは、「うるわしきやまとごころ」

 

 

●あかにんじゃ 穂村弘/木内達朗

秘密の巻物をねらって城に忍び込んだ忍者は、赤色! すぐに見つかってしまう忍者が、次々に変身していくのですが・・・。次は何に変身するのか、ページをめくるのが楽しくなる絵本。

 

 

●そらとぶでんしゃ アンマサコ

牛乳パックで作った電車に乗って、赤いクレヨンたちと一緒に冒険の旅へ出かけるファンタジー。やさしいタッチの絵が印象的な絵本。

 

 

●くんちゃんとふゆのパーティー ドロシー・マリノ/あらいゆうこ

冬ごもりを延期してもらったくんちゃんは、初めて見る雪に大喜びしますが…。食べ物に困っている小さな動物たちのためにパーティーを開いたり、お父さんのためにびっくりバーティを準備したり。黒と赤の2色で、ほのぼのとした家族の時間が描かれる。くんちゃんシリーズは、子育て中のお母さんにおすすめしたい絵本。

 

 

●ないたあかおに 浜田廣介/池田龍雄

村人と仲良くしたい赤鬼のために、自分が悪者になる青鬼。人間と仲良くなれた赤鬼を残して、青鬼は遠くへ去っていく。なにかをやろうとすれば、なにかを犠牲にしなければならない。かけがえのない本当の友達を犠牲にして、赤鬼が得たものとはいったいなんだろうか。友情物語以上の深読みをしてみたい、大人の絵本。

 

 

●こうふく あかの 西加奈子

ある日突然に、妻が他の男の子供を宿したことを知らされる「俺」。次第にお腹が大きくなる妻に激しい憤りを覚え、すべてに嫌気がさしてしまった「俺」は…。時空を超えて交錯する二つの物語。「こうふく みどりの」との2部作で、巻末に掲載されてる西原理恵子との対談がすごくいい。

 

 

●太陽を曳く馬 高村薫

「晴子情歌」「新リヤ王」に続く、福澤一族百年の物語の第3作は、いよいよ合田雄一郎刑事が登場。一人の僧侶の不可解な死で幕が開き、児童虐待、現代絵画の世界、精神を病む者の犯罪、日本の死刑制度、宗教団体、動機不明の殺人…深い迷宮へと彷徨っていく。惨劇の起きた部屋は、犯人の絵筆によって赤く塗りつぶされていた…。

 

 

●冷血 高村薫

闇の求人サイトで知り合った男たちが起こした、歯科医一家強盗殺害事件。恨みでも金目当てでもない。なぜ、熟睡している幼い子供二人までも惨殺されなければならなかったのか。犯罪の重大性や凄惨な現場とは全く釣り合わない、犯人たちの供述やその態度は、捜査員たちを困惑させる。物語の後半は、合田雄一郎刑事を通して犯人たちの「生と死」「罪と罰」を問い続ける。

 

 

●神の火 高村薫

 1991年に発表された本作は、原発技術者だった元スパイが「世界一安全と言われている」日本の原発を襲撃するという話。東西冷戦、KGB、CIA、北朝鮮、公安警察。国際政治の激流に翻弄されながら、自由を求め続ける男たち。チェルノブイリ原発事故の経験者を登場させるなど、原発が大きなテーマである。投げかけられた問いは、20年後の2011年に現実となった。

 

 

●まってる。 デウィッド・カリ/小山薫堂

一人の男の子の成長と人生を、一本の赤い糸と可愛らしいイラストで描いた絵本。映画「おくりびと」の脚本で知られる小山薫堂氏の翻訳も心に沁みてくる。「お兄ちゃん、って呼ばれる日を」「運命の出会いを」「戦争が終わるのを」…人生には、さまざまな「まってる」が待っている。

 

 

●蚊がいる 穂村弘

現代短歌を代表する歌人、絵本作家によるエッセイ集。「蚊がいる」のに、「いない」ことにされてしまう現実。他者とのズレや居心地の悪さ。鮮やかな赤い装丁は横尾忠則。又吉直樹との対談も収録されている。

 

 

●ぼくの、ミギ 戸森しるこ/アン マサコ

赤い靴下のヒダリが、消えたミギを探す物語。なぜミギはいなくなってしまったの? いろんな靴下と出会いながら、やっと再会できたミギは、古く色あせていた。赤い靴下たちが最後に見つけた居場所とは。

 

 

●おりぼんちゃん まえおけいこ。

リボンが大好きな女の子おりぼんちゃん。蟻や小鳥や子犬に手伝ってもらって、自分でちょうちょ結びができるようになった女の子が、町じゅうにリボン結びをしていくところが可愛い。

 

 

●だんろのまえで 鈴木まもる

雪の降る山で迷ってしまった男の子が見つけたのは、ドアのついた大きな木。中に入ると、動物たちが暖炉の前で休んでいた。うさぎは「つかれたら やすめばいいんだ、むりしないで じっと してれば げんきに なるさ」とだけ言って火をみている。ロウソクの灯、暖炉の火、動物たちの体温、うさぎの言葉、元気にドアを出ていく男の子…心も体も温まる絵本。

 

 

●たびだちのとき エリック・バテュ/木坂涼

冬のある日、ひとりぼっちだった鳥のもとに、その鳥は突然やって来た。歌をうたい、巣を作り、生きていくことを教えてくれたその鳥は、春が訪れた日、突然いなくなる。水墨画のような絵の中で、鳥たちの胸の赤い色が際立って美しい絵本。

 

 

●いつだってともだち モニカ・バイツェ/エリック・バテュ/那須田淳

赤い水玉模様のフレディが遠くへ行ってしまって、悲しくてたまらないピンクの子ゾウのベノは、森のフクロウに「元気になるための3つの方法」を教えてもらう。「悲しいときはがまんせずに泣く」「悲しい気持ちを誰かに話す」「心の中に友だちの部屋を作る」。家にもどったベンは、フレディを思って3日と1時間と5分泣き続けた…。

 

 

●ハチドリのひとしずく いま私にできること 辻信一(監修)

森で起きた火事を消すために、一滴ずつ水を運ぶ小さな小さなハチドリ。逃げ出した森の動物たちは、ハチドリを見て「そんなことをして何になるんだ」と笑う。「私は、私にできることをしているだけ」と答えるハチドリ。南米エクアドル先住民族に伝わる物語は、私にできる「ひとしずく」は何かを問いかけてくる。

 

 

●ぷかぷか 石井聖岳

「もし、空を飛べたら?」ある日、海にぷかぷか浮かびながらタコは考えた。空を飛びたいタコの想像の数々が、波間にぷかぷか浮かぶようなリズムで描かれる、ゆったり絵本。海の青と空の青に、何とも可愛らしい赤いタコさん。

 

 

●REDあかくてあおいクレヨンのはなし マイケル・ホール/上田勢子

本当は青いクレヨンなのに、赤いラベルを貼られた「レッド」。中身とラベルが一致している他のクレヨンたちが、赤い色で書けるようにと様々な手助けをしてくれるけれど、どうやっても青になってしまう。新しい友だち「パープル」の励ましで海を書いてみると…。多様性をクレヨンの色や長さで表現し、明快なメッセージが伝わってくる絵本。

 

 

●あかがいちばん キャシー・ステイン/ロビン・ベアード・ルイス/ふしみみさを

 お母さんはわかってくれないけれど、赤はとても素敵な色。古くなったからとか、それでは寒いからとか、どっちでも同じでしょとか、それは大人の考え。私は、赤いカップで飲んだほうが美味しいし、とにかく赤が好きなんだから。

 

 

●わたしはあかねこ サトシン/西村敏雄

 しろネコかあさんと、くろネコとうさんから生まれたのは、しろネコ、くろネコ、とらネコ、ぶちネコ、そしてあかネコだった。家族は、良かれと思って赤色を白や黒や縞模様に変えようとするが、「そのままのじぶんがよかった」あかネコは、家族が寝ている間に旅に出る。美しいあおネコと出会って生まれたのは、黄色や橙や緑や紫…虹色の子ネコが7匹!

 

 

●「助けて」が言えない SOSを出せない人に支援者は何ができるか 松本俊彦

周囲が手を差し伸べているのに自傷行為や薬物乱用を繰り返したり、いじめにあっていても親や教師に打ち明けない。こんな人たちは、「誰かに助けてほしい」という気持ちを持っていないのではなく、助けを求めることで排除されることを恐れていたり、「楽になってはいけない」と思い込んでいるのかもしれない。さまざまな臨床現場の実践から、支援の道筋を探る。

 

 

●もしもゆきがあかだったら エリック・バテュ/もきかずこ

一日中降り続いている雪を見て、僕は考える。もし、雪が赤だったら、今の自分ではない何者かになれるだろうか。スーパーヒーロー、魔法使い、海賊、カメラマン、アラビアの王様…。想像の翼を思いっきり広げて、いろんな色をぐるっと一回りして戻ってきたところは…白い雪の上の足跡をたどっていったら、君に会えるだろうか。

 

 

●かないくん 谷川俊太郎/松本大洋

「かないくんがなくなりました」先生が、いつもと違う声で言う。「かないくんがつくったきょうりゅうが、まだある」「でももうかないくんは、しゃしんのなかにしかいない」「しぬって ただここにいなくなるだけのこと?」死について考える静かな静かな絵の中で、赤いマフラーや赤い靴や、ウサギの赤い目が印象的。

 

 

●1こでも100このりんご 井上正治

果物屋さんに置かれている1個のりんご。そこを通る人たちが、それぞれ感じたことを語っていく。1個のりんごでも、見る人によって、何とおりものりんごがある。

 

 

●りんごがひとつ ふくだすぐる

りんごが一つ落ちていた。動物たちは、みんなお腹を空かせている。一匹のサルがりんごを取っていったので、みんなで追いかけていくと…。動物たちの動きや表情が、とても生き生きとしていて可愛い絵本。

 

 

●あかまるちゃん デビット・A・カーター/きたむらまさお

1から10までの数のなかに、ひとつだけ赤い丸がある。とてもユニークで楽しい紙工作のしかけ絵本。

 

 

●源氏物語の色 別冊太陽

十二単といえば、くれない色。「紅花をたっぷり使って千入(ちしお)に染めた絹の色の美しさはまさに匂うー照り映えるものであった。私はそのすこやかなためらいのない紅(くれない)の色を見たとき、『源氏物語』の作中人物への誉め言葉に「匂う」「きよら」という語の用いられているのが、いかにもと納得されたのだった」日本の伝統色の名前には、赤系だけでも90を超える数があるという。

 

参加できなかったメンバーから紹介されたのは、インドの民族画スタイルで描かれた一冊です。

 

●「太陽と月~10人のアーティストによるインドの民族の物語」 ギーター・ヴォルフ/青木恵都

インド先住民族を代表する10人のアーティストが描いた、太陽と月と星をめぐる物語。「太陽は生命をもたらし、月は時を刻む」「月はしずかに慈愛にあふれ 太陽は激しく情熱に満ちている」

 

 

いろんな「あか」がありましたが、《生命》と《情》の象徴であることは間違いないようです。

 

次回は、12月14日(土)19時~

テーマは、年末恒例「今年のベスト本」です。

ご参加お待ちしております。