第17回「本好きのための読書サロン」は、「白」をテーマに本を持ち寄って語り合いました。
「青」「黒」に続く色シリーズの3回目です。
今回もまたいろんな「白」があって面白かった(^^)
持ち寄り本のセレクトには個性が現れていましたが、響き合うものは同じ。
ご参加の皆さん、ありがとうございました。
●北海道の大自然に生きる動物たちの生態を木版画で描く手島圭三郎の絵本シリーズから2冊
「ゆきうさぎのちえ」絵本塾出版
熊ざさの中で生まれたゆきうさぎの子が、様々な試練を乗り越えて大きくなっていく。キツネから逃れ、仲間に出会い、たくましく生きる小さな命。
「きたきつねのゆめ」
凍てつく寒さのなか、獲物を求めてさまようきたきつね。ゆきうさぎを見つけて追いかけるが逃げられてしまい…。静かで神秘的な冬の森でおきる不思議なできごと。
●世界的アーティスト奈良美智の絵本から2冊
「ともだちがほしかったこいぬ」マガジンハウス
あまりにも大きすぎて誰にも見つけてもらえない子犬。ある日、一人の女の子が気づいてくれて…。寂しい子犬と女の子が少しずつ近づいて友だちになっていくようすが、可愛く楽しい絵で描かれている。
「ベイビーレボリューション」文/浅井健一 クレヨンハウス
ベンジー・浅井健一の名曲「Baby Revolution」が絵本に! 世界中の赤ちゃんたちが、はいはいで進んでいく先には戦場が…。30億のベイビーたちが、危険もかえりみず、ひたすらはいはいしていく! 愛と平和のはいはい。
●奇想天外な発想とダイナミックな絵で人気のスズキコージの初期の絵本
近著には、アーサー・ビナード氏とのコラボで原爆ドームの語りを絵本にした「ドームがたり」がある。
「あつさのせい?」福音館書店
あまりの暑さにボーっとした馬のはいどうさんは、白い帽子をベンチに忘れる。帽子を拾ったキツネは自分のカゴを忘れ、カゴを拾った豚は…擬人化された動物たちの愉快なグルグル話。
●著者の上野宗則氏は、父親の死によって遺族となった経験から「人の死に立ち会うときなにができるのか」をテーマに活動。
ナースのためのエンゼルメイク・アカデミア主宰
「エンゼルケアのエビデンス」素敵SOKEIパブリッシング
エンゼルケア後(退院後)の状況をデータ化し、遺族の目線を大切にした具体的な手順や配慮について紹介している。
●ヨシタケシンスケの表紙絵が素敵なトルストイ・ショートコレクション「三びきのクマ」(理論社)より
「人は何によって生きるか」
貧しい靴屋は、裸で飢えて死にそうな男を可哀そうに思って家に連れ帰り、温かい食事でもてなす。その男は、実は、神様の怒りに触れて「3つの言葉の意味がわかるまで帰って来るな」と言われて地に落とされた天使だった。自分に何が必要かを知る力を与えられていない人間は、自分自身のことを思い煩うことによってではなく、愛によって生きる。そのことを知った天使は、まばゆい光とともに天に帰っていく。
●動物や植物を生き生きと描く作家として知られるミロコマチコが、愛猫てつぞうとの日々をつづった絵本
「てつぞうはね」ブロンズ新社
しろくてふかふかのねこ すわるとおにぎりみたい すごくでっかいおにぎり。いつもいつも一緒にいたのに、8回目の冬に逝ってしまった。「わたしが死んだら、またてつぞうと一緒に暮らすよ」
●松谷みよこ/文 いわさきちひろ/絵 からなる美しい絵本。日本各地に残る「鶴女房」の中から、老夫婦のもとに女の子がやってくる鳥取の民話を選んだのは、昔は子を持たない家は村の<結い>の仲間には入れなかったという話を聞いたからだという。桃太郎やうりこ姫は、子もたず夫婦のもとに神が授けた子。
「つるのおんがえし」偕成社
おじいさんに助けられたつるが、娘の姿になっておじいさんの家を訪ねてくる。自分の羽をぬいて美しい布を織り、恩返しをしようとするが…。近所の人に煽られて「見るな」のタブーを破ってしまうのは、この本では<おばあさん>!
●新感覚時代劇として評判を呼んだドラマ「猫侍」で、ネコの玉之丞を演じたネコたちの写真集。美しく愛らしい白猫<あなご>は、14歳とは思えない。凛とたたずむ姿は、まさにスターの風格。
「猫侍~玉之丞写真集~」扶桑社
腕は立つけど不器用な生き方しかできない浪人が、お金のために仕方なく受けた仕事は「猫の暗殺」だった。しかし、その白猫のつぶらな瞳に魅せられて斬ることができず、こっそり長屋に連れて帰るが…。コワモテの浪人が、“ネコあるある”で下僕になっていくのが楽しいドラマ。
●古典に精通した深い教養と鋭い感性で日本の美を求め続けた「永遠の探究者」白洲正子(1910年~1998年)の本3冊
「KAWADE夢ムック~総特集・白洲正子~」河出書房新社
明治の終わりに華族として生まれ、女人禁制の能舞台に立ち、14歳から18歳までアメリカに留学。19歳で白洲次郎(実業家。終戦時、吉田茂の要請を受けGHQとの折衝にあたる)と結婚後は、ヨーロッパと日本を行き来しながら3人の子を産み育てる。戦後、当時は男性の世界であった「批評家」として多くの芸術家・文化人と交流。
「白洲正子 十一面観音の旅~奈良・大和路編」平凡社
白洲正子の名文とともに、奈良・大和路の十一面観音像をめぐるガイドブック。今も数多く残る大和路の美しい観音像に、日本の「名もなき古い神」の面影を見出す。観音菩薩は、衆生を救うため修行中で「仏と人間との中間にいる」存在なのだという。
「白洲正子 十一面観音の旅~京都・近江・若狭・信州・美濃編」
日本各地の「かくれ里」に眠る美しい仏たちをも求めて続く巡礼の旅。「女躰でありながら、精神はあくまで男」という観音菩薩の二面性は、『第三の性』『両性具有の美』などの著作を表している白洲正子自身の姿なのだという。
●映画「万引き家族」の是枝裕和監督が1991年に手掛けたテレビのドキュメンタリー番組『しかし、福祉切り捨ての時代に』は、生活保護を受けられずに焼身自殺した女性と、福祉行政に尽くしながらも「水俣病和解訴訟」で国との板挟みに追い込まれて自死したエリート官僚を描き、デビュー作にして「ギャラクシー賞」を受賞した
「雲は答えなかった~高級官僚 その生と死~」PHP文庫
『しかし…と この言葉は 絶えず私の胸の中でつぶやかれて 今まで、私の心のたった一つの拠り所だった 私の生命は、情熱は このことばがあったからこそ 私の自信はこのことばだった けれども この頃 この言葉が聞こえない 胸の中で大木が倒れたように この言葉はいつの間にか消え去った(中略) ただ一人佇んでいながら 夕陽がまさに落ちようとしていても 力強く叫べたあの自信を そうだ 私にもう一度返してくれ』 自死した官僚の遺族から見せられた一篇の詩が、若き日の是枝監督をとらえた。
●意識と感覚の関係を考察し、無言の死体と格闘する解剖学者:養老孟司の本
「骸骨巡礼」新潮文庫
ローマやリスボンには、骸骨で部屋を飾りつけた納骨堂や3700体分の骨で装飾された教会がある。日本とヨーロッパの身体感の違いや、自然や森羅万象に思いをはせる旅の記録。養老節さく裂。
●最近もテレビドラマ化された、山崎豊子の代表作「白い巨塔」は、大学病院で起きた医療過誤訴訟を舞台に、人間の欲望や野心、良心や誠というものを赤裸々に描く。綿密な取材とストーリーだてで明らかにされていく医療と患者の様々な問題は、50年の歳月を経ても色あせずリアルだ。それぐらい凄い作品だし、根本は大して変わっていないということでもある。
「続 白い巨塔」新潮社
一審判決で勝利した財前教授であったが、信念を貫く原告側の粘り強い闘いによって次第に追い詰められていく。控訴審で敗訴した日に倒れた財前は、進行癌で余命わずかと診断される。自らの死と向き合う財前が遺したものは…。
次回は、都合により第3土曜に開催しますのでご了承ください。
10月19日(土)19時~21時
テーマは、『赤』です。
ご参加お待ちしています。