「どこまでやるの?」の季節到来

「感染症対策」の出前講座が増える季節になりました。

介護事業所は「感染症対策」の研修を実施しなければならないことになっているので、インフルエンザ流行を前に開催しておこうというものです。

このブログでも何度か書いてきましたが、「どこまでやれば気が済むのかな?」と言いたくなるような、不安でいっぱいな事業所が多いです。

 ⇒「そのマスク、必要ですか?

 ⇒「どこまでやるの?

一方で、どんな効果があるのか曖昧なままで、「他がやっている」「前の施設でやっていた」ことを漫然と続けていることもあります。

 

インフルエンザウィルスやノロウィルスによる集団感染が発生した場合、大きく取り上げられる風潮の影響もあるのでしょうか。

職員が一人二人と続けて休んだ場合に、現場が立ち行かなくなるという心配もあるのでしょうか。

 

ピリピリしている割には、実際にやっていることは曖昧なままという印象です。

なぜそうしているのか、と質問すると、笑ってしまう管理者もおられます。

あるいは反対に、それはもう徹底的に、とにかく誰も彼もマスク、でも管理者はマスクしてない(笑)

また、どこもかしこも消毒消毒、塩素の臭いプンプン、扱っている職員の健康は大丈夫なの?というような所もあります。

 

 

セルフケアが難しい上に、抵抗力の少ない高齢者が複数いる場で、目に見えない病原体を相手にするわけです。

しかも、自分たちも利用者も、食べたら出すし、動くわけで・・・。

「食べて」「動いて」「出して」あたりまえの暮らしを築くなかで、私たちは感染症対策を「どこまでやるの?」

 

 

私たちができることは、利用者の不調に早く気づいて、早めの対処を適切にすること。

そして、自分たちが媒介者となって拡げないこと、まん延させないこと。

そのためには、「手洗いに始まり、手洗いに終わる」なのですが、あたりまえに「手洗い」ができていないところが多いです。

そして、速乾性のアルコール手指消毒液も、アルコールの臭いで満足している状況です。

手洗い体験をしてもらうと、いかに普段の仕事中にできていないかは、皆さんわかってくれます。

 

 

しかし、1時間かけて「自分たちが媒介者にならないために」という話をしたにもかかわらず、最後の「ふりかえりタイム」で必ず出てくるのが、「利用者の手指消毒をどうしたらいいか」という話題です。

 

自分たちもできていなかった手洗いや消毒を、「利用者にやってもらうにはどうしたらいいか」を一生懸命話し合っているのです。

 

自分たちが媒介しないための手洗いをどう徹底させるか、について話し合っていただきたいのですが。

 

私は、利用者の手洗いや消毒をしてくださいとは、ひとことも言っていません。

 

逆に、「利用者の習慣を変えさせたり、集団生活ルールを順守させたりするための指導や監督が感染症対策ではありません」「私たちは幼稚園の先生ではありません」と繰り返し言っているのです。

 

「食事の前に手を洗う」そんなあたり前の習慣を守りたい利用者がいたら、車イスでも片マヒでも、洗面所で水を流して洗えるように工夫して介助するのが仕事です。

 

食事の前に手を洗う習慣がなかったり、わからなくなっている利用者がいたら、温かいお絞りを渡してみたらどうでしょう。

気持ちよくなって、にっこり微笑んで、いっそう食事が美味しくなるかもしれません。

 

毎食毎食、アルコールの臭いをプンプン撒き散らして、消毒消毒と言われて、そんな中で、あなたは食事をしたいと思いますか?