『自分の感受性くらい』

2年あまりお付き合いが続いている、女性の利用者が二人おられます。昭和一ケタも前半のお生まれで、激動を生き抜いて来られました。

それぞれに持病や障害をもたれていて、体はあちこち不自由です。

おふくの自費サービスを利用してくださっている理由は、ひとり生きてきた生活スタイルを変えないという意志と覚悟なのだと思います。

自費サービスを利用できるだけのゆとりがある、と言ってしまえばそれまでなのですが、

けっして裕福と言うことではなく、

「自分のために必要だから使う」

「今日いちにちを良くすごすために使う」

そんな合理的な考えなのです。

 

そんな大先輩の《自分の生き方を貫く覚悟》は、

身だしなみや言葉づかいにも現れていて、

お会いするたび、私も背筋がピンと伸びる思いです。

周囲の人や世の中を見る感性も、衰える兆しはありません。

お二人に会うたびにイメージする 大好きな詩を紹介します。

 

 

 自分の感受性くらい   茨木のり子

 

 ぱさぱさに乾いてゆく心を

 ひとのせいにはするな

 みずから水やりを怠っておいて

 

 気難しくなってきたのを

 友人のせいにはするな

 しなやかさを失ったのはどちらなのか

 

 苛立つのを

 近親のせいにはするな

 なにもかも下手だったのはわたくし

 

 初心消えかかるのを

 暮らしのせいにはするな

 そもそもが ひよわな志にすぎなかった

 

 駄目なことの一切を

 時代のせいにはするな

 わずかに光る尊厳の放棄

 

 自分の感受性くらい

 自分で守れ

 ばかものよ      小学館「永遠の詩」より