猫の手も借りたいときに

詩集『心のなかにもっている問題(長田弘・晶文社)に、『忙中、猫あり』という詩があります。

まだしていないこと、しなければならないことがあって、猫の手も借りたいほどだと思ったときに、

猫は、ゆったりと寝そべって静かな目で私をみている。その気づかわしげな二つの目が、なにか大事なことを忘れてない? と問いかけている。

『猫の手を借りてまで、忙しさを生きようなんて、どだいまちがっている。』

『猫はいつだって、じぶんの時間というものを

 じぶんにもっともふさわしいしかたで

 身にもって、日を過ごしている。』

 

あれもこれも できてない できない 

できるわけない でもしなければ。

大事なことを見失わないように 

忘れないように 『忙中、猫あり。』

 『きみはねこの友だちですか?』  長田 弘

 

  一ぴきのねこと

  友だちになれたら

  ちがってくる 何かが

  もっと優しくなれるかもしれない

  ねこは何もいわずに語る

  はげしく愛して

  ゆっくり眠る

  きみはねこの友だちですか?

 

    胸のドアを開けなくちゃ

    ねこが きみの

    こころにはいれるように

    胸のドアを開けなくちゃ

 

  一ぴきのねこと

  友だちになれたら

  ちがってくる 何かが

  もっと自由になれるかもしれない

  ねこは生きたいように生きる

  ゆきたいところへ

  すばやく走る

  きみはねこの友だちですか?

 

  胸のドアを開けなくちゃ

  ねこが きみの

  こころにはいれるように

  胸のドアを開けなくちゃ            詩集 『心の中にもっている問題』 晶文社より