介護の現場を当事者が変える!

香川県高松市内で開催された「障害当事者こそが変える!人出不足の介護現場~だれのため?みんなのため?みんなで考えよう!~」に参加してきました。

「障害当事者の活動保障は、福祉用具と人材があてこそ」「当事者の権利保障も大事、でも、今、介護者の権利擁護が必要では?」という問題提起を障害当事者からも行うというもので、全国頚髄損傷者連絡会と日本リハビリテーション工学協会が主催する合同シンポジウムでした。

(共催:ナチュラルハートフルケアネットワーク)

午前中は、福祉用具を展示している企業のプレゼンテーションと体験でした。

ひとくちに「介護用リフト」と言っても、使う用途や使う人の状態によってさまざまあり、環境によっても違ってきます。

初めて見るものもあったり、進化しているものもあったり、皆さん熱心に説明を聞いたり体験したりしていました。

それにしても、リフトってなんで笑顔になるんでしょう。つられている人が笑顔になるから、操作している人も嬉しそうですね(^^♪

 

初めてリフト体験した彼の感想を紹介します。

 

「自分よりも障害が重い人がリフトを使っているのを見たことはあり、たいへんそうだなあと思っていた。今日は初めてのことで最初は緊張したけれど、すごく気持ちがよくて楽しかった」

 

「自分も浴室への出入りは抱えてもらっていて、介助者に負担がかかる。だから普段はシャワーだけで浴槽に入れないのは仕方ないと思っていた。これなら安心だし介助者に負担がなくてよいと思う」

 

「脳性まひ者は特に、自分でできることは頑張らないといけないというところがあり、無理をして体を痛めてしまうこともある。福祉用具を使って楽になる場面があったり、リハビリにも使えたりするのはいいと思う」

 

「自分が子どもだったとき、このスタンディングリフトがあったら、訓練の時間が楽しかっただろうな」

(無理やり型にはめ込むように立たされていたので)

 

午後からのシンポジウムには4名の方が登壇され、それぞれのお立場から、たいへん貴重なお話をしていただきました。

人口減少や介護人材不足について統計数字から厳しい現実をつきつけられ、腰痛のために貴重な人材を失った辛い経験の話もありました。

介護ロボットの導入によりマンパワーの不足を解消しようとする動きが進んでいるが、人力かロボット(機械)かという二者択一では真のニーズに応えられない。

専門家がとらえたニーズは、当事者の要望(デマンド・表出された希望)と食い違うことがあり、真のニーズに応えるためには障害当事者が声をあげることは非常に大切だと。

表出された希望の背景にある「真のニーズ」に応える支援。

活発な意見交換も行われ、障害当事者と専門家チームが協同して変えていこうという熱気に満ちた会場となりました。

いつでもだれでも、障害当事者になる可能性はあるのです。

抱え上げたり持ち上げたりしない介護現場に変わる意味を、自分ごととして考えていかなければと改めて思いました。

 

 

私のメモからではありますが、印象に残った言葉を。

 

●「新・腰痛予防指針」は事業者が人力介助を行わせないとあるが、「当事者」が行わせない

●当事者も介助者を守り育てる意識を

●目先の利益にとらわれず、5年後10年後を見据えた活動を

●行動が変わらない人は知識が変わっていない

●スタッフが「しんどい」と言える環境づくり、聴くスキルが必要

●そのニーズって、誰のニーズ?

●障害当事者個人にも、事業所にも、モデルがあることが大事。「ここまでいけるんだ!」というモデルが必要

 

 

 

今回は「当事者から」ということでしたが、実は、私自身は家族の立場としても聞いていました。

「措置」から「契約」に変わった当時、かすかに抱いた希望は即座に消え去っていました。

「選択の自由」と「自己責任」という言葉から抱いた未来への希望でしたが。

当事者も事業所もギリギリの綱渡りみたいに成り立っている今の「自立生活」に、家族の安心はない。

 

 

そんなわけで、「当事者こそが人手不足の現場を変えていこう」という声を少し複雑な気持ちで聞いていました。

介助が必要な人の側から、介助する人の健康や権利擁護について考え、人材不足を解決していこうとしている現実。

未来に希望はあるのだろうか・・・。

確かに、高齢者では難しいことなので、障害当事者が声をあげて行動していく意義は、とてもとても大きい。

新しい時代の、新しいムーブメント。

当事者が声をあげて意識を変えていけば、現場の変化の勢いはすごいだろうなと期待したい。

 

 

では家族は、どんな意識をどう変えていけば?

 

在宅や施設で、抱え上げたり持ち上げたりしない介助を導入している事業所を選択すること。

家族も、自分自身の介助法を見直し、本人に与える影響について客観的になり、ちゃんと向き合うこと。

しかし、身を犠牲にして(とは当人は思ってないが)親がやるのが当然という意識を変えるのは大変です。

やむなく他者に託すのではなく・・・。

みんなの健康と幸せのために福祉用具も使うという意識に。

私も、まだまだ発展途上だなと痛感した一日でした。