「水」のように柔軟に力強く

第15回「本好きのための読書サロン」のテーマは『水』でした。

ハッとするような選書や「ほお~!」と唸ってしまう選書の数々で盛り上がり、本との出会いを楽しんだ時間。

今回は特に、子どもの本について考えることが多かった気がします。

生きていくことの悲しみと喜び。自分へのまなざし。他者へのまなざし。小さく弱いものへ、大いなるものへ。

ご参加の皆さま、ありがとうございました。

次回は6月8日です♪

●つみきのいえ  平田研也/加藤久仁生 

2009年の第81回アカデミー賞・短編アニメ賞を受賞した作品が絵本になった。海面上昇により水没しつつある街で、つみきを積み上げるように上へ上へと家を増築しながら暮らす老人が主人公。ある日、大切な物を水の中に落としてしまったおじいさんは、海の中にもぐっていきます。すると・・・。

 

 

●雨の名前  高橋順子/佐藤秀明

季語としての雨の名前と俳句や短歌、気象用語や言い伝えなど、美しく豊かな日本語の世界を味わう本。身近な自然や暮らしの風景写真とともに、雨が心に沁みてくる。「まほろば歳時記」の第1集で、ほかに「花の名前」「風の名前」「月の名前」などがある。

 

 

●喜びの泉  ターシャ・テューダー

オスカー・ワイルドやシェークスピアなど、作家や詩人の言葉にターシャ・テューダーの美しく繊細な水彩画を組み合わせた『言葉の花束』。人生いろいろあるけれど、自分の心の奥のほうにある喜びの泉を見つけよう。

 

 

●むらをすくったかえる  サトシン/塚本やすし

村はずれの沼に住みついたカエルは、村人から「気持ち悪いよそ者」と嫌われている。村に大干ばつが来ると知ったカエルのとった行動は・・・。わかりやすいハッピーエンドではないので、どんな読後感を抱くのかは人それぞれかもしれない。もしも自分がカエルだったら?・・・ と問いかけられた。

 

 

●ねこはちときんとっと  寺島ゆか

ネコの”ねこはち”と金魚の“きんとっと”と”すみれちゃん”。どのページも、表情豊かで楽しくて愉快でかわいい。額の毛の黒色が八の字のようになっているネコは“はちわれ”と呼ばれるから“ねこはち”なのかな。ネコと暮らしたことのある人は、きっと最後の絵にニンマリしてしまう。

 

 

●絵巻えほん~川~  前川かずお

雪に覆われた山の雪解け水から始まり、山里から町を経て海へと続く川の一生。四季折々の人間の営みと川の関りが表現された2メートル以上の絵巻物で、文字はなく、川をめぐる自然の風景と人工物が緻密に描かれている。

 

 

●どんくまさんのかわのたび  柿本幸造/蔵富千鶴子

灯台に住むウサギの親子から手紙をもらった“どんくまさん”は、筏を汲んで川を下り、ウサギの親子に会いに行く。川を下る旅で出会うのは、秋の山々の美しい風景、かわいい子どもたち、にぎやかな町の風景。「どんくまさん」は、20冊以上も出版されている人気シリーズ。

 

 

●老子~上善の言葉~  宮下真/武田双雲

『老子は2千数百年前に書かれれいますが、そのことばは輝きを失うどころか、閉塞感を抱えたいまの時代にこそ向けられた多くのメッセージを含んでいます』『老子の説く「無為自然」の生き方は、これからをどう生きるべきかの大きなヒントを与えてくれるはず』(「はじめに」より)書道家・武田双雲による入魂の書も収録されている。

 

 

●中国の思想大全(マンガ特別版)  蔡志忠/野末陳平/和田武司

中国三千年の思想と哲学、先人たちの知恵をマンガでわかりやすく読むことができる。原文や解説も掲載されている。老荘思想には、逆転の発想が満載だ。

 

 

●老子×孫子  100分de名著

 老子は、無為自然を説く道家思想の祖。孫子は、人為の極致である戦争についての思索を深めた人。対極にあるように思える両者に共通しているのは『水』。水は形がなく柔軟に変化し、万物を潤し、ときに巨大なエネルギーを発する。人間の真の幸福のために、「老孫」思想を提唱しようという一冊。

 

 

●樹木希林120の遺言  樹木希林

表紙カバーは、ミレイの名作「オフィーリア」(川に沈みゆくオフィーリアが唄を口ずさんでいる場面を描いている)をモチーフにした企業広告。「死ぬときぐらい好きにさせてよ」のキャッチコピーとともに大反響を呼んだ。『固定観念や常識にとらわれず、人生を面白がり、どんな困難も自分の“栄養”とする_そんな樹木さんが遺した言葉』(「刊行にあたって」より』若いころの秘蔵写真や懐かしいドラマの写真なども多数掲載されている。

 

 

●ふってきました  もとしたいずみ/石井聖岳

どんより曇った空から降ってくるのは雨・・・ではなくて、ワニ、ゾウ、パンダ・・・そして最後に降ってきたのは・・・! 本当にあったら大変な出来事が淡々と繰り返されていくストーリー。女の子のビックリしたりドギマギしたりしている表情、落ちてくる動物の姿がおもしろくて楽しい絵本。

 

●緑色のカエル茶色のカエル   きしらまゆこ

池を見て「きれいな池だ」と思う緑色のカエルと、「きたない池だ」と思う茶色のカエル。一方は喜びや楽しみを感じ続け、もう一方は不平や不満を抱き続ける。茶色のカエルには何が起きていたのか・・・。人生を好転させる気づきを示唆する本。

 

 

●みしのたくかにと  松岡享子/大社玲子

小さな種をまいたおばさんは、「あさがおかもしれない、すいかかもしれない、とにかくたのしみ」という札を立てる。さて、どんな芽が出てくるのかたのしみなのだけれど、通りかかった王子様は、立札を反対に読んでしまう。

 

 

●ハチドリのひとしずく~いま、私にできること~  辻信一(監修)

森の火事に、小さなクチバシで一滴ずつ水を運ぶハチドリ。他の動物たちは「そんなことをしてなんになるのだ」と笑うが、ハチドリは「私は私にできることをしているだけ」と答える。南米エクアドルの先住民族に伝わる話。

 

 

●楽しい川辺  ケネス・グレアム/ロバート・イングペン

大掃除を放り出して外に飛び出したモグラは、ネズミやアナグマやカエルたちと冒険の旅に。100年以上読み継がれてきたイギリス児童文学の名作を、国際アンデルセン賞受賞の挿絵画家による美しい挿絵と新訳で読む。

 

 

●ちいさなぬま  井上コトリ

森の中の小さな“ぬま”は、やって来る動物たちを次々に飲み込んでしまう。なぜそんなことをするのだろう。一人の女の子との出会いによって、“ぬま”のなかに起きた気づきと変化とは? 別れるのは寂しいけれど、「じゃあまたね」と心から言いあえる友だちがいるのって幸せなことだ。

 

 

●新美南吉童話集  北川幸比古/鬼塚りつ子(編集)

夭逝の童話作家・新美南吉(1913年~1943年)の名作10話と、文学紀行や作品解説も掲載されている。世の中には悲しいことが多いけれど、悪い人ばかりではないし、うれしいこともある。緑のカエルと黄色のカエルが、相手の体の色を「美しくない」と言ってケンカになる。争っているうちに冬が来たので、休戦して土にもぐると、二人が眠る土の上にはびゅうびゅうと冷たい北風が吹く。春が来て、カエルたちは背中が温かくなって目が覚める。ラムネのようにすがすがしい水をたたえた池に飛び込み土を落としたカエルたちは、互いの色を「きれいだ」と思う。『よくねむったあとは、人間でも、かえるでも、きげんがよくなるものです』

 

 

●水玉の履歴書  草間彌生

前衛芸術家・草間彌生(1929年~)が発してきた言葉と、本書刊行時(2013年)のインタビューで構成。自らの闘いの軌跡と哲学、芸術への真摯な思いが圧倒的な熱量をもって迫ってくる。『円が平面で活発な動きがないのに対して、水玉は立体で無限です。そして、水玉はひとつの生命であり、月も太陽も星も、数億粒の水玉のひとつなのです。これは私の大きな哲学です。水玉による平和をもって、永遠の愛に対する憧憬を心深く打ち上げたいと思っています』

 

 

●ぞうきん  河野進

岡山県円通寺で修業した禅僧良寛にちなんで設けられた「聖良寛文学賞」を受賞し、「玉島の良寛さま」と呼ばれた河野牧師の詩集。『争って先がけするより 途中もみんなと仲よく行きたい どうせ海に落ちつくのだ あくせくせずに悠々と参ろう「悠々」』

 

 

●水は語る  江本勝

良い言葉、悪い言葉、音楽にも反応して変化する水。「ありがとう」の言葉を水に見せると、形の整った美しい結晶が作られる。「ばかやろう」の言葉を見せると、美しい結晶はできない。水の結晶が示す真実とは。

 

 

●ガンピーさんのふなあそび  ジョン・バーニンガム

ガンピーさんが小舟に乗って出かけると、子どもや動物たちが次々に乗り込んでくる。初めのうちはガンピーさんとの約束を守っていた子どもたちだけれど・・・。ガンピーさんは大した大人だ。子どもを見守るとは、こういうことをいうのだと気づかせてくれる。