利用者にコーヒーを出したらダメなの?

「コーヒーは利尿作用があるから水分補給したことにならない、というのは本当ですか?」

介護職の人から興味深い質問をいただいたので、そのことについて考えます。

質問者の話では、利用者がコーヒーを要望した場合でも他のものを勧め、コーヒーを飲んだ場合も水分摂取量としてカウントしないのだそうです。

コーヒーにはカフェインが含まれているから利尿作用がある、というところまでは一応理解できました。

実体験としても、緑茶や紅茶やコーヒーを飲んだら尿量が増えるというのはわかります。

 

「水分補給したことにならない」「カウントしない」ということの根拠は、いったいどこにあるのか?

周辺の介護関係者に聞いてみたところ、驚きました。

「コーヒーは水分補給したことにならない」という話は、どうやら存在するようです。

インターネットで検索をしてみたところ、

脱水症・熱中症予防の関連で「コーヒーはNG」という書き方をしているものがありました。

 

逆に、カフェインの利尿作用について疑問視するような書き方をしているものもありました。

 

このような話の根拠になっていると思われる『実験データ』の多くは、

比較によるものだということを知っておく必要があります。

医薬品の効果についても同じで、100%ではないのです。

(ニセモノの薬でも一定の効果は得られる、というプラセボ効果の話は有名です)

 

どうしても気になる人は、「カフェインレス」にするという方法もあるでしょう。

けれど、ほんとうにその製品が「カフェイン含有量ゼロ」かどうか、厳密にチェックされてからどうぞ。

 

「水分補給したことにならない→出さない・カウントしない」の出所はともかく、

それを根拠にして、利用者の「コーヒーが飲みたい」を否定してしまうのはいかがなものか。

おそらく、自分ではできない、あるいは、できない環境にある利用者が職員に要望しているのです。

 

また、そのような対応について、少しなりとも疑問に思っているスタッフが存在していることも問題です。

・・・いや、これは『希望』といえるのかもしれませんね。

 

脱水症・熱中症予防のために水分を勧めることは大事です。

しかし、飲みたいコーヒーを否定されて、水やジュースを飲まされる利用者の生命の質が上がるとは思えません。

それは水分摂取を促すという作業であって、ケアではありません。

いったい何のために? 誰のために?

 

コーヒーを飲む習慣がある人には、コーヒーを飲んでもらったらいいんじゃない?

普通の人の普通の感覚を見失わないでください。

なぜ、介護施設だと普通のことではなくなるのでしょう。