ケアの原点にもどって

蝉の幼虫が出てきたと思われる小さな穴と、

蝉の抜け殻を発見する猛暑の日々です。

今年も、おふくの玄関周りはにぎやかです。

時節がら、脱水症・熱中症の出前講座が続きました。

デイサービスや入所施設で出会うお年寄りの健康にかかわることなので、皆さん真剣な表情です。

なかなか、こちらの意図するように水分をとってもらえないのが共通の悩みのようです。

どこでも、あの手この手の工夫をこらしておられます。

「おすすめの飲み物は何ですか?」という質問を

何度かいただきました。

「安全で安価で安心なのは麦茶かなあ」という返答に、皆さん驚かれます。

どうも、スポーツドリンクとか経口補水液というような答えを期待されているようなのです。

テレビ番組とか商品CMとかの効果は大したもの。

商品についてランキングするつもりはありませんので、デイサービスや施設などで、お年寄りに提供する場合の留意点のみお伝えしています。

講座のなかで基本的な知識や発症時の対応などをお話ししますが、

一番の関心事は、「何をどうやって飲んでもらったら効果的なのか」ということのようです。

 

私自身が施設等で働いていた時も、一日の水分摂取量の目標が設定されていることがありました。

一律に設定された目標値を達成することが、「業務」となってしまった場合のしんどさを経験しました。

本来目指していたはずの、「飲みたい・食べたい=生きていたい」が忘れられていました。

 

「飲みたい・食べたい=生きていたい」がケアの基本であること。

その人が好むもの・喜ぶものが、「おすすめ」のものであること。

職員も一緒に「おいしいね」と言って、飲んだり食べたりできること。

そんなことを繰り返しお伝えしていたら、

「ハッとしました」「原点にもどることができました」「やる気になれました」という感想をいただきました。

たいへん嬉しいことでした。

 

ある施設で、実際に悩んでいるケースについて相談がありました。

あの手この手で、なんとか水分量を増やそうと“がんばって”も成果が出ず困っている方がいるとのこと。

「治療(点滴など)」をすべきか、というところまで思い詰めておられました。

いくつか確認の質問をしてから、

「飲み物をお出しするとき、“飲んでもらわねばオーラ”を振りまいていない?」と聞いてみました。

深刻な表情が一転、「うわ~っ! ぐさりと来ました!」 「そのとおりです~!」と笑顔になってくれました。

 

お年寄りのためを思って一生懸命に取り組んでいるのですが、

その人の個別の背景や現状から推察すると、職員の「善意」が負担になっている可能性がありました。

施設に入って、職員の保護と管理のもとにおかれている圧迫感とでもいうような・・・。

介護が陥りやすいところかもしれません。

知らず知らず、お年寄りの上位に立って「あなたのため」を振りまいていないか、ふりかえってくれるといいな。